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先週末、だんなのおばあちゃんが94歳で亡くなった。漁師町に嫁ぎ、家族のため、親戚のため、地域のために尽くした一生だった。 おばあちゃんの家へ行くと、いつも知らない人がたくさんいて、台所でご飯を食べていたり、居間で酒盛りしていたり。毎回のように顔を合わせる人がいて、てっきり親戚だろうと思ったら近所の人だったり。だんなでさえ、いまだに誰が誰だかわからないらしい。 おばあちゃんは、午前中に訪ねてきた人には必ず朝ごはんをすすめる。食べていなくても、「食べてきたから」と遠慮すると、「ご飯はいくらでもあるんだから、食べていきなさい」。出てくるのは大釜で炊いたご飯に甘塩のシャケ、裏の畑で採れたきゅうりの糠漬け、アサリの味噌汁、焼きたての海苔。それにいくつかの常備菜や漬物の類。シンプルだけど、ひとつひとつがおばあちゃんの長年の経験とこだわりの賜物だ。豊かな、確かな味。それは、おばあちゃんの生き方そのものでもあったと思う。 糠床が水っぽくなったら、昆布を入れなさい。 お赤飯のささげはね、入れすぎちゃダメなの。ちょうど良い量があるのよ。 訪ねてくる人の中には、自分の親が亡くなって家ももう無いけれど、おばあちゃんを母と慕って遠方から里帰りしてくる人もいた。おばあちゃんのご飯を食べ、お土産をたくさん持たされて、ありがとう、また来るから元気でね、と笑顔で帰っていく。 入院して、だいぶ記憶が不確かになり、子供の顔さえわからなくなっても、お見舞いに来る人に「朝ごはんを食べていきなさい」「外の冷蔵庫にビールが入っているから」と、もてなすことだけは忘れなかった。みんなが「それじゃいただいてくね」と話を合わせると、にっこり笑っていた。そして、ご機嫌でとんとんとんからり、と「隣組」を歌うのだった。 何軒あろうと一所帯 助けられたり助けたり 結婚してはじめておばあちゃんの家へ行ったとき、お手製のご馳走をテーブル狭しと並べて温かく迎えてくれたことをわたしは一生忘れないだろう。そして、おばあちゃんが大事にしてきた家庭料理の心をわたしなりに受け継いでいきたいと思う。
by abukamo
| 2009-02-12 01:38
| カテゴリなし
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Comments(4)
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yamatogokoro-mi at 2009-02-12 17:47
素敵な方だったのですね。とにかくみんながお腹いっぱい
になる事が嬉しいんですよね。きっと。 あたしもそんな風におもてなし出来る人でありたいです。 そう言うご近所つき合いって最近では鬱陶しさが先に立って しまうけれどあたしは羨ましく思います。
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abukamo at 2009-02-12 21:42
ヤマトくんのかあちゃん様、どうも!^^
やっぱ人間食べることが基本ですもんね~。 ご飯のある家には人が集まる、ってことですね。 もとは赤の他人でも、縁があって知り合った人は家族のようにもてなす。 そんなおばあちゃんだったので、トシくって可愛げもない^^;孫嫁のことも あったかく受け入れてくれたのでしょう。 知らない人がいっぱいいるのに、おばあちゃん家にいくとホッとしてました からね。あの時代の人は懐の深さが違いますね~。
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okashina-s at 2009-02-12 22:20
すごくいいお話に胸がじぃ~~んとしました
それこそ私が小さな頃は玄関にカギなんてかけてなくて、どのおうちにも勝手に入ってみんなで遊んでましたし、おうちもいつも知らない大人がいっぱいでした おばあちゃんが作るご飯はなんであんなにおいしいんでしょうね~ きっと何十年も手間暇をかけて作ってきたからでしょうね きっと幸せな一生だったでしょうね おいしいものをみんなで「おいしいね」と食べれることが何よりも贅沢で、しあわせなことだと思います 私も・・・いつも誰かが寄ってくれるようなおうちにしていきたい・・・ 「ごはん食べていきや~~」とね
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abukamo at 2009-02-13 07:45
RUIさん、おはようございます。^^
ほんと、おばあちゃんのご飯ってなんであんなにおいしいんでしょう。 手間を惜しまず、何千回、何万回と繰り返し作ってきた説得力というか。 甘口、辛口、どんな好みの人も「うまい」「おいしい」って食べてました。 糠漬けひとつとっても、糠床は人に触らせなかったし、漬ける時間も きっちり計って、ほんとに目が覚めるようなおいしさでしたよ。 うちはプライバシーに敏感なマンション暮らしですが、最近、プライバシーを 大事にしつつ、近所付き合いをすることも可能なのでは、と考えるように なりました。人とつながりを持つと、人間一人で生きてるわけじゃない、 と思いますね。知らないところで誰かのお世話になっている。 おばあちゃんのご飯のような、あったかいお返しができるようになりたい ものです。^^
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